NY恋物語・第50話

「ゆみちゃん!」

ミスタールビンに良明をお願いして、自分の

クラスに戻ろうと歩き出したゆみは、教室の

後方から呼び止められた。

「あら、こんにちは」

ゆみは、ヒデキに挨拶した。

ヒデキも、ミスタールビンの英語の授業を受

けていたのだった。

「どうしたの?ゆみちゃんもミスタールビン

の授業を受けるの?」

ヒデキは、ゆみに聞いた。

NY恋物語・第49話

「ゆみ、久しぶりじゃないか」

ミスタールビンは、ゆみに日本語で言った。

ミスタールビンは、大学で日本語を勉強して

いて、日本人と同じぐらい上手に、きれいな

日本語を話せる先生だった。

「うちのクラスのヨシュワキー君です」

ゆみは、ミスタールビンに紹介した。

「こんにちは、ヨシュワキー君」

ここPS24小学校では、日本から来たばか

りの日本人生徒たちを集めて、ミスタールビ

ンが英語の授業を行なっていた。

NY恋物語・第48話

「私たち、先に行っているね」

シャロルは、ゆみに言った。

ゆみたちの午後の授業は音楽だった。ゆみは

良明をミスタールビンの教室に連れて行かな

ければならなかったので、シャロルは、先に

音楽室へ向かった。

「これからミスタールビンの教室に行くの」

ゆみは、良明に説明した。

「ミスタールビンは、私よりも日本語がすご

く上手だから、話しやすいと思うよ」

ゆみは、良明に伝えた。

NY恋物語・第47話

「私のサンドウィッチ、半分食べる?」

ゆみは、自分の分のサンドウィッチを半分、

良明に差し出したが、良明は、結局それも全

く何も食べてくれなかった。

「ゆみ!」

アスター先生が、ゆみたちの座っているテー

ブルにやって来た。

「午後からの授業なんだけど、午後は、ヨシ

ュワキーはミスタールビンの授業なので、ミ

スタールビンのところに連れて行ってあげて

ちょうだい」

NY恋物語・第46話

アメリカの学校でのお弁当は、紙袋にサンド

ウィッチと缶ジュースを入れて持ってきてい

る子が殆どだった。

「ごはんだよ」

ゆみも、自分の紙袋を開くと、中から持って

来たサンドウィッチと小さな缶ジュースを出

して食べは味めた。

良明は、横の席に座ったままだ。

「ごはん持って来ていないの?」

ゆみは、良明に聞いたが、良明は黙ったまま

椅子に腰掛けていた。

NY恋物語・第45話

いつの間にか、ゆみは、日本語で説明すると

いうよりも、良明の手を引っ張って、移動さ

せるようになっていた。

「マイケルじゃないけど、ゆみのそれっても

はや通訳じゃないよね」

シャロルも、ゆみの通訳を笑っていた。

食堂には、机と椅子が用意されていて、生徒

たちは、そこへ腰掛けてお昼を食べる。

お昼ごはんは、給食ではなくて、生徒たちそ

れぞれが持参して来た自分のお弁当を食べる

ことになっていた。

NY恋物語・第44話

「ゆみ、その通訳ならば、俺は日本語を全く

話せないけど、俺でも出来ると思うぞ」

マイケルが笑いながら、ゆみに言った。

確かに、今のゆみの誘導は、日本語らしい言

葉をまるで使っていない、手で引っ張っただ

けだった。

ランチタイムは、学校の地下にある食堂へ行

って、そこで食事をするのだった。

「食堂に行くのよ」

どうせ、ゆみが話す日本語は良明には通じな

いのだから、手振りで説明し始めていた。

NY恋物語・第43話

「次はランチタイムです、生徒の皆さんは教

室の前に並んでください」

アスター先生は、皆に言った。

午前の授業中、ずっとゆみは自分のルーズリ

ーフを広げて、良明にも見せて、一生懸命、

先生の話している授業の内容を説明していた

のだったが、ゆみの日本語が通じないらしく

て、良明はずっと黙ったままだった。

「ランチタイムよ。前に並ぼう」

ゆみは、良明の手を引っ張って、椅子から立

ち上がらせると、一緒に前へ並んだ。

NY恋物語・第42話

「アスター先生!ゆみの日本語がおかしくて

全然通訳になっていません」

マイケルが手を上げて笑いながら、アスター

先生に報告した。

「ゆみも、アメリカ生活の方が長くて、あま

り日本語得意じゃないから困ったわね」

アスター先生は、マイケルに苦笑した。

「ゆみちゃんは、簡単な日本語で良いから、

彼に説明してあげなさい」

もっとお兄ちゃんと日本語の勉強をしておけ

ば良かったと思っても今更手遅れだった。

NY恋物語・第41話

「私、ゆみ。ヨシュワキー君、こんにちは」

やはり、良明は何も言わず黙ったままだ。

「ね、たぶん日本語の発音おかしいのよ」

シャロルは、ゆみに言った。

以前、ヒデキ君たち日本人とゆみが会話して

いた時にも、ゆみの日本語の発音がおかしく

て、ヒデキたち日本人にさえ、ゆみの言葉が

通じなかったことがあったのを思い出した。

「そうかもしれない」

ゆみが、困ったようにシャロルの顔を見た。

「どうしたら良いかな」

NY恋物語・第40話

ゆみは、アスター先生に言われて、良明を自

分の隣の席に案内した。

「ヨシュワキー君、ここがあなたの席よ」

ゆみは、手で引っ張って椅子に座らせると、

良明に言った。

「ここ、あなたの席」

ゆみが話しかけても、良明は黙っていた。

「ゆみ、ゆみの日本語って発音下手だから通

じていないんじゃないの」

それを見て、親友のシャロルが、向かいの席

からゆみに言った。

NY恋物語・第39話

ゆみの隣の席には、マイケルがいた。

「マイケルは、向かい側のシャロルの横に席

を変わってちょうだい」

アスター先生は、ゆみの横の席を空けると、

そこに良明のことを座らせた。

「ヨシュワキー、ゆみの隣があなたの席よ」

アスター先生は、良明に伝えた。

「英語じゃ通じないか。ゆみ、あなたが日本

語で説明してあげてちょうだい」

アスター先生は、ゆみに命じた。

「こんにちは、ここがあなたの席よ」

NY恋物語・第38話

「えーと、彼の名前は、」

アスター先生は、紙に書いてある良明の名前

を読み上げようとして、苦労していた。

「これは、どう読んだらいいのかしらね」

アスター先生は、日本人の名前の読み方の難

しさに悩んでいた。

「えーと、多分ヨシュ。ヨシュワキーかな」

アスター先生は、なんとか読み切った。

「日本人同士だから、ゆみの隣の席にしまし

ょうか。ゆみちゃん、色々教えてあげてね」

アスター先生は、ゆみに言った。

NY恋物語・第37話

アスター先生は、良明には英語が通じないと

は思ったが、一応そんなことをお喋りしなが

ら、良明と歩いていた。

「はーい。皆さん、授業を始めますよ」

アスター先生は、教室の入口に立つと、中に

いる生徒たちに声をかけた。

「今日は、新しく仲間になる日本から来た新

入生を紹介します」

アスター先生は、良明のことをクラスの生徒

たちに紹介した。

「彼の名前は、」

NY恋物語・第36話

アスター先生は、良明と一緒に廊下を歩いて

教室へ向かっていた。

「こんにちは、アスターといいます」

アスター先生は、良明に自己紹介したが、良

明には英語が通じなかったようだった。

「まだ日本から来たばかりで、英語じゃわか

らないのか」

良明は、黙ったまま、歩いていた。

「うちのクラスには、日本人の女の子がいる

のよ。席は、その子の隣にする予定だから、

いろいろ学校のことは、彼女に聞いてね」

NY恋物語・第35話

岡島の奥さんも、中山先生たちと一緒に2人

の教室へついて行くことになった。

「隆くんは、もうここまでで良いわよ」

「良いんですか?」

「隆くんは、会社だってあるでしょう」

中山先生は、隆のことを解放してくれた。

「それじゃ、宜しくお願いします」

隆は、中山先生たちと別れると、車に戻って

マンハッタンの会社へ出勤した。

「意外に、早く解放してもらえた」

隆は、車の運転しながら呟いていた。

NY恋物語・第34話

そして、アスター先生は、良明を連れて自分

のクラスへと行ってしまった。

「こんにちは、行きましょうか」

ミラー先生は、美香に言うと、今度は、美香

を連れて一緒に行ってしまった。

由香と末っ子の萌香は、担任の先生に加えて

中山先生も一緒に、それぞれの教室へ向かう

こととなった。

「お母さんも、お子様たちと一緒に教室へ見

に行きますか?」

「お願いします」

NY恋物語・第33話

そして、中山先生は、奥にいたミラー先生に

声をかけて呼んだ。その手前にいたアスター

先生にも声をかけた。

「あ、今日からの新入生よね。承りました」

アスター先生は、中山先生に返事した。

「うちのクラスに入るのは彼かな」

アスター先生は、中山先生に確認すると、良

明のことを中山先生から引き継いだ。

「私も、ご一緒にクラスまで行きますか?」

「いらないわ。大丈夫よね」

アスター先生は、良明の顔を覗き込んだ。

NY恋物語・第32話

妹のゆみが通っている学校だし、ゆみは、こ

の学校では優等生で通っていて有名なので、

出会う先生皆に声をかけられて大変だった。

「あ、中山先生!」

「あ、隆くん」

中山先生は、この学校で学校事務の仕事して

いる日本人の事務員だった。

「先生、今日から岡島さんのところの子が通

うんで、宜しくお願いします」

「ああ、そうだったわね。聞いているわ」

中山先生は、隆に返事した。

NY恋物語・第31話

「ゆっくりめに走るから、明日からの通学の

ために学校までの道を覚えるといいよ」

隆は、皆に言った。

隆は、学校に着くと、かつて知ったる学校な

ので、入口から中に入るとすぐ手前にある職

員室に入って、中山先生の姿を探す。

「お、タカシ!元気ですか?」

「ハロー、ゆみがお世話になっています」

隆は、知っている先生に出会う度、皆に挨

拶をしていた。

「お世話になっています」

NY恋物語・第30話

「それじゃ、行きましょうか」

隆の愛車、オールズモービルの助手席には、

岡島さんの奥さんが座っていた。後部座席に

は、岡島さんの4人の子供が座っていた。

「学校って車で通うの?」

「歩いていけるから大丈夫だよ。今日だけは

俺が皆を学校まで送ったら、そのままマンハ

ッタンの会社に出勤しなければならないから

車で行くけど」

隆は、美香に説明した。

「それじゃ、出発するよ」

NY恋物語・第29話

「お兄ちゃんも、うちの学校へ来るの?」

「そうだな。10時ぐらいに行くけどな」

隆は、ゆみに答えた。

「10時?それじゃ、私は授業に遅刻してし

まうんだけど」

「ゆみは、時間になったら1人で行きな」

「一緒に行けないの?」

「遅刻しちゃうだろう」

隆に言われて、ゆみは1人で学校へ行った。

「なんだ、つまらない」

「行ってらしゃい」

NY恋物語・第28話

月曜日の朝、朝食を食べ終わった後、隆はソ

ファに座って、のんびりとテレビの朝のニュ

ース番組を見ていた。

ゆみは、朝食の後片付けをしながら、不思議

に思っていた。

「片付け終わったのか」

「うん」

ゆみは、隆に答えた。

「お兄ちゃん、会社に行かないの?」

「今日は、岡島さんたちを学校へ案内してか

ら、会社に出社するからゆっくりなんだ」

NY恋物語。第27話

「わからないぞ、アスター先生のクラスにな

るかもしれないぞ」

アスター先生は、ゆみのいるクラスの担任の

先生だった。

「そうかな」

ゆみは、隆の言葉にも、この件に関してはあ

まり期待していなかった。

「ゆみも一緒のクラスになれるといいだろう

「それは良いけど無理よ」

ゆみは、隆に答えた。

「でも、期待はしたって良いだろう」

NY恋物語・第26話

「ゆみと同じ学校に通うんだぞ」

「そうかな」

「美香ちゃんが、ゆみと同じクラスになるか

もしれないぞ。ゆみも日本人の友達がほしい

って言っていただろう」

隆は、ゆみに言った。

「同じクラスにはならないよ、だっていつも

日本人の生徒はロールパン先生のクラスだも

の、私と同じクラスにはならないよ」

PS24小学校では、日本人生徒が転校して

くると、ロールパン先生のクラスだった。

NY恋物語・第25話

「岡島さんの家族は5年生の男の子と妹が3

人いるんだよ」

「そうなのね」

ゆみは、あまり興味なさそうに答えた。

「その妹のうち、1番上のお姉さんが、ゆみ

と同い年の3年生なんだ」

「私と同い年なの」

「そう」

隆は、ゆみに答えた。

「そして、彼女たちはPS24に通うんだ」

「私と同じ学校じゃないの」

NY恋物語・第24話

「今日はさ、岡島さんのお迎えにケネディ空

港まで行ってきたんだ」

隆は、ゆみに伝えた。

「誰?私の知らない人」

「知らなくはないんだぞ。ゆみだって、小さ

い時には岡島さんにいっぱい抱っこしてもら

って、俺がうまく食事させられない時、代わ

りにごはん食べさせてくれたんだぞ」

隆にそう言われても、ゆみには全く記憶がな

く全然覚えていなかった。

「全然覚えていないんだけど」

NY恋物語・第23話

「ゆみの肉じゃが美味しいな」

隆は、夕食を食べながら、ゆみに言った。

「良かった」

「おまえは会った事ないはずなのに、おまえ

の料理は、お母さんの味と同じ味するよ」

隆は、妹の顔を覗きこみながら言った。

「最近、少しアメリカンっぽいけど、顔もお

母さんにますます似てきているな」

隆は、仕事から帰ってくると、姿だけは家に

母親がいるみたいに思えていた。

「私って、お母さんに似ているんだ」

NY恋物語・第22話

「うん、おばあちゃんが日本から送ってくれ

たじゃがいもで作ったの」

髪色も少し茶っぽく日本人離れしたアメリカ

ンな感じの少女が、少したどたどしい発音の

日本語で、隆に返事した。

髪は染めているわけではない、こっちの生活

が長く環境がそうしてしまっていた。

「ふふ、おまえは可愛いな」

隆は、エプロン姿のゆみを抱きしめていた。

小さい頃からずっと育ててきた妹なので、兄

であり父であり母でもあった。

NY恋物語・第21話

隆が岡島さん達に言った。

「何か困ったことあったら、すぐに呼んでも

らえれば、7階から駆けつけますので」

隆は、岡島さんの部屋を出ると、エレベータ

ーで降りて、7階の自分の部屋に戻った。

「ただいま」

隆は、家に帰ると、家で待っていてくれた妹

に声をかけた。

「お帰りなさい」

「お、今日は肉じゃがなのか?」

隆は、キッチンの鍋の中を覗き込んだ。

NY恋物語・第20話

「お父さん、脱いだ服がそのままになってい

るよ、仕方ないわね」

美香が、お父さんのベッドの上に脱ぎ散らか

されている服を呆れたように眺めた。

「それでは、後はごゆっくり」

隆は、岡島さんの家族に挨拶した。

「帰ってしまうの?」

「うん、妹が家で待っているからね」

「そうか」

「ちなみに、俺も、このアパートメントの7

階に住んでいるから、これから宜しくね」

NY恋物語・第19話

「さあ、どうぞ」

隆は、岡島さんから預かってきた家の鍵でド

アを開けると、岡島さんの家族を部屋の中に

招き入れた。

「うわ、広い家!」

隆が、リビングやダイニングと部屋を順番に

案内して確認していく。

「ここが君たち女性陣の部屋かな、そっちが

良明くんの部屋になるのかな」

隆が案内しながら、車から持ってきた荷物を

それぞれの部屋に入れた。

NY恋物語・第18話

「そう、このアパートメントの17階の部屋

が君たちの新しい家」

「そうなんですね」

「君たちのお父さんは、少し前にアメリカへ

先に来ていて、もうここに住んでいるよ」

「お父さん、先に住んでいたんだ」

美香は、隆に答えた。

「部屋へ案内しますね」

隆は、岡島さん達の家族と車を降りると、エ

レベーターに乗って上がっていく。

「大きなエレベーター!」

NY恋物語・第17話

「俺が会社で仕事して、ゆみが料理とか洗濯

とか家の中のことをしている」

「すごい!」

美香は、隆の話を聞いてますます驚いた。

「ほら、到着したよ」

隆は、車をアパートメントの駐車場に入れな

がら、皆に告げた。

隆たちのアパートメントは、マンハッタン郊

外のリバーデールという町に在った。

「ここが、私たちの新しい家なの」

美香は、建物を車の窓から見上げていた。

NY恋物語・第16話

隆は、岡島さんに感謝を伝えた。

「え、それじゃ、ゆみちゃんってお父さんも

お母さんもいないの」

「いないよ、俺だけ」

隆は、運転しながら美香に答えた。

「ごはんとかは、隆さんが作ってあげている

の?」

「昔は作っていたけど、最近は、料理はゆみ

が担当で作っている」

「そうなんだ」

美香は、同い年で料理しているのに驚いた。

NY恋物語・第15話

高校を卒業したばかりの隆に、そう簡単に就

職先など見つかるはずもなかった。

「隆くん、うちの総務部で働らかないか」

そんな時に、声をかけてくれたのが父親と同

じ商事会社のニューヨーク支店で働く岡島さ

んだった。

当時、父親はニューヨーク支店の支店長を務

めていた。そして、岡島さんがうまく話をつ

けてくれて、支店の総務部に配属してもらえ

ることとなったのだった。

「ありがとうございます」

NY恋物語・第14話

日本の祖父母や親族は、隆に妹はアメリカの

施設に預けて帰国しろと命じた。

しかし、隆には、今や両親を失って、家族は

まだ幼い妹1人しか残されていなかった。

「俺、進学はしないよ!こっちで仕事を見つ

けて妹を育てることにする」

隆は、帰国しろと言う祖父母や親族たちに自

分の決意を伝えた。

しかし、隆は、それまで進学する予定で、就

職活動も一切していなかった。

「どこに就職したら良いんだろうか」

NY恋物語・第13話

「隆は日本へ帰ってきなさい」

日本の祖父母や親族は、1人残された隆に提

案していた。

「日本に帰国するなら妹も連れて行く」

隆は、祖父母や親族たちに伝えていた。妹は

少し前に未熟児室から出てきたばかりで身体

がまだ弱い子だった。

日本行きの長時間の飛行機に搭乗できるだけ

の体力も持ち合わせていず、日本へ帰国する

ことはできなかった。

「アメリカは福祉がしっかりしているのよ」

NY恋物語・第12話

病院の職員たちが担架を抱えて、すぐに飛び

出して救助してくれた。

しかし、父と母は即死だった。

「うそでしょう、これから妹と2人だけで、

どうしたら良いんだよ」

隆は、幼い妹を抱えて呆然としていた。

3月

ジャパニーズスクールに通う隆にとっては、

高校卒業間近のことだった。

高校を卒業したら、隆1人で帰国して、日本

の大学へ入学することが決まっていた。

NY恋物語・第11話

それでも、ようやく未熟児室から出て、父親

が迎えに来て、母子ともに退院となった。

退院の朝

病院のエントランスロビーに飛び込んできた

大型トラックに巻き込まれて、隆たちの両親

は亡くなってしまった。即死だった。

「え、お父さん!お母さん!」

事故の時、たまたま妹を抱きかかえてエント

ランスのソファに腰掛けていた隆は、妹とも

どもトラックの事故には巻き込まれずに助か

ったのだった。

NY恋物語・第10話

十年前、隆の母親は出産のため、ニュージャ

ージー州の病院にいた。

18歳、高校卒業間近の隆のすごく歳が離れ

た妹が生まれようとしていたのだった。

「お母さんは大丈夫よ、大丈夫だから」

隆の横には、大学時代からの親友だった岡島

さんが付き添ってくれていた。

オギャーオギャー!

少し難産ではあったが、妹のゆみは無事誕生

した。しかし、未熟児で生まれた妹は、しば

らく未熟児室から出ることはできなかった。

NY恋物語・第9話

「良明は、日本では野球していたのよ」

「へえ、こちらにいる日本人の子同士でも、

よく近くの公園で野球してますよ」

隆は、岡島の奥さんと話していた。

「本当に懐かしいわ」

岡島の奥さんは、助手席から運転している隆

見ながら話しかけていた。

「あの当時は、本当にお世話になりました」

「ううん、元気そうで何よりだわ」

岡島の奥さんは、7年ぶりの再会を懐かしそ

うに隆と話していた。

NY恋物語・第8話

隆は、岡島さん達と駐車場の車に戻ると、岡

島さんたちの荷物をトランクに入れた。

「良明も手伝いなさいよ」

「はい」

岡島さんの息子が、スーツケースを持ち上げ

てトランクに入れた。

「お、力持ちだね」

「いえいえ」

「体つきも大きくて、スポーツとか得意そう

じゃないか」

隆は、良明のがっしりした肩を触った。

NY恋物語・第7話

「そうよ」

岡島さんの奥さんが、隆に答えた。

「学校は、家の近くの公立小学校で良いんで

すよね」

「ええ」

「それなら、うちの妹と同じ学年のクラスに

通うことになるかもしれない」

「そうなんだ、それだと心強い」

美香は、隆に言った。

「妹と仲良くしてやってくれな」

美香は、隆に言われて頷いていた。

NY恋物語・第6話

「隆さんよ」

岡島さんの奥さんは、自分の子供たちに隆の

ことを紹介した。

「こんにちは、もしかして美香ちゃん?」

「はい!」

3人いる女の子の中で1番大きい子が、隆に

元気に答えてくれた。

岡島さんの家族は、3人の女の子以外に、大

きな男の子が1人いた。

「君が美香ちゃんか、うちの妹と同い年なん

でしょう」

NY恋物語・第5話

「要らないわよ、隆くんのことはすぐにわか

ったわよ。何年もの付き合いじゃない」

「俺もわかるとは思ったんですけど、あれか

ら何年も経っていますし」

隆は、笑顔で岡島さんの奥さんに答えた。

岡島さんは会社の上司でもあるが、奥さんは

隆の亡くなった母親の大学時代に仲の良かっ

た大親友の同級生でもあった。

「ゆみちゃんは元気?」

「ええ、おかげさまで」

隆は、岡島さんの奥さんに返事した。

NY恋物語・第4話

「隆くん」

隆は、ウェルカムボードを広げようとしてい

たちょうどその時に、背後から声をかけられ

て振り向いた。

「あ、岡島さん!ようこそ、NYへ」

隆は、岡島さんの奥さんに気づき、慌てて挨

拶をした。

「お久しぶり」

「このボード、せっかく作ってきたけど、要

らなかったですね」

隆は、岡島さんに答えた。

NY恋物語・第3話

隆は、バッグから『ウェルカム岡島様』と書

かれたウェルカムボードを取り出すと、日本

からの便が着く到着ロビーへと向かった。

今日、日本からここに到着する岡島さん一家

のお出迎えにやって来たのだった。

会社の上司の家族で、総務部に配属している

隆にとって、転勤して来る社員家族のお出迎

えや彼らのニューヨークでの生活を支えると

いうことは大切な業務の一つだった。

「岡島さんの奥さんとは、妹が生まれて以来

久しぶりの再会だな」

NY恋物語・第2話

会社でちょっとしたトラブルがあり、空港へ

向かう出発時間が少し遅れてしまっていたの

だった。

「やれやれ、なんとか間に合いそうだ」

今井隆は、父から引き継いだオールズモービ

ルを空港の駐車場に停めた。

「ラッキー!日本からの便は多少到着が遅れ

ているじゃん」

隆は、空港の到着案内を確認していた。

「さてと」

隆は、ホッとして一息ついていた。

NY恋物語・第1話

「やばいな、遅刻しちゃうかもな」

今井隆は、愛車のオールズモービルを運転し

ながら呟いた。

このオールズモービルは、7年前に亡くなっ

た父が運転していた車だった。父が大切にし

ていたその車を、隆が未だに大切に乗り続け

ているのだった。

「なんとか間に合ってくれ」

マンハッタンからジョージワシントンブリッ

ジを渡ると、郊外に在るジョンFケネディ空

港を目指してフリーウェイを飛ばしていた。