ジュニアヨット教室物語・第1話

「だから、それは対象者が大人たちだけのヨ

ット教室ですよね」

片桐一郎は、理事会での討論に思わず熱が入

ってしまっていた。

「そうじゃなくて、少年少女たちのものを始

めたいのです!」

片桐一郎は、ヨットマンだった。

今井隆がヨットを保管している横浜マリーナ

に同じくヨットを保管していた。

そして、マリーナの理事の1人でもあった。

ジュニアヨット教室物語・第2話

といっても、今井隆が33フィートのナウテ

ィキャット、ラッコを保管している敷地内に

ヨットを保管しているわけではなかった。

「お願いします」

片桐一郎は、理事会での熱の入った討論で熱

くなった自分の頭を冷やすため、横浜マリー

ナのテンダーボートサービスに乗って、沖に

停められている自分のヨットへ向かった。

片桐一郎のヨットは、アクエリアスと同じよ

うに、マリーナ沖に係留されていた。

ジュニアヨット教室物語・第3話

今井隆のラッコは、隆が出航したい時には、

マリーナの職員に頼んでクレーンでヨットを

海上に降ろしてもらってから、海に出航して

いる。

片桐一郎のヨットは、マリーナ沖合いの海上

に係留されているため、マリーナの職員が操

船しているテンダー、小型のボートに乗って

そこまで連れて行ってもらってから、ヨット

を出航させている。

「送っていただきありがとうございます」

ジュニアヨット教室物語・第4話

どちらかというと、今井隆のラッコよりも、

中村さんのアクエリアスと同じような保管ス

タイルだった。

「あ、こんにちは」

「これから出港ですか?」

「いえ、少し船内でのんびりするだけ」

片桐一郎は、3つ隣の場所に係留している顔

見知りのアクエリアスの中村さんと一緒のテ

ンダーになって、2言3言、言葉を交わして

会釈をしていた。

ジュニアヨット教室物語・第5話

「ありがとう!」

「いいえ、お気をつけて」

テンダーが、片桐一郎のヨットに着艇すると

片桐一郎はテンダーを操船してきてくれたマ

リーナ職員にお礼を言ってから、自分のヨッ

トに乗り移った。

片桐一郎のヨットは、YAMAHA製の30

フィートのヨットだ。もう進水してからだ

いぶ経つヨットで、マリーナでも結構古い

方のヨットだった。

ジュニアヨット教室物語・第6話

ラッコやアクエリアスは、今井隆や中村さん

が単独で所有しているヨットだった。

片桐一郎のヨットは、8人共同で所有してい

るヨットだった。

共同所有といっても、8人で同額の資金を均

等に出し合って購入したというわけではなく

1/3ぐらいを片桐一郎が負担して、残りの

分を7人で分担して購入したヨットだった。

1人でヨットを所有するのは、コストが大変

なので共同所有するヨットは多かった。

ジュニアヨット教室物語・第7話

共同所有といっても、8人で同額の資金を均

等に出し合って購入したというわけではなく

1/3ぐらいを片桐一郎が負担して、残りの

分を7人で分担して購入したヨットだった。

資金でいくと、片桐一郎が一番多く負担して

いるので、8人のオーナーの中では、片桐一

郎が筆頭オーナーということになる。

筆頭オーナーが片桐一郎で、8人での共同所

有なので、八郎丸という船名だった。

「この船も、だいぶ古くなってきたな」

ジュニアヨット教室物語・第8話

片桐一郎は、自分のヨットの傷んできている

箇所をあっちこっち眺めながら呟いた。

「今度、セイルも新調しなきゃならないな」

ブームに付いている古いセイルを確認しなが

ら独り言を呟いていた。

「いや、その前に、今は子供たちのOPを何

隻か購入しなければならないな」

OPを買うための資金源が、片桐一郎の頭を

悩ませていた。

「理事会で、予算を多少でも頂けたらな」

ジュニアヨット教室物語・第9話

片桐一郎には、今年6年生になる息子が1人

いた。

「俺だけじゃなく、息子がヨットを楽しめる

環境も作ってやりたいな」

いつも自分だけが、日曜日になるとヨットへ

乗りに、横浜マリーナに来てしまうのではな

く、息子にもヨットに親しんで楽しんでもら

えるようになったら良いのにと考えていた。

そのために、わざわざやりたくもない横浜マ

リーナの理事にも立候補したのだった。

ジュニアヨット教室物語・第10話

「だから、それは対象者が大人たちだけのヨ

ット教室ですよね」

片桐一郎は、理事会での討論に思わず熱が入

ってしまっていた。

「そうじゃなくて、少年少女たちのためのヨ

ット教室を始めたいのです!」

片桐一郎の理事会での熱弁は続いていた。

「今、横浜マリーナにあるクルージングヨッ

ト教室は、大人のためじゃないですか」

片桐一郎は、理事会で発言していた。

ジュニアヨット教室物語・第11話

「今、横浜マリーナにあるクルージングヨッ

ト教室は、生徒の対象が18歳以上の大人た

ちばかりじゃないですか」

片桐一郎の熱弁は続いた。

「そうではなくて、もっと下の年齢、子供達

が楽しんで乗れるようなヨット教室を始めた

いのです!これからのヨット人口の普及、活

性化のためにも必要だと思うんです」

片桐一郎の意見に賛同してくれる理事も何人

かはいたが、大多数は反対が多かった。

ジュニアヨット教室物語・第12話

片桐一郎の意見に賛同してくれる理事も何人

かはいたが、大多数はそんなもの必要ないだ

ろう、クルージングヨット教室を毎年開講し

ているのだから、ヨットをやりたい人は大人

になってから始めれば良いだろうとというも

のが多かった。

「その予算はどうするんだ」

反対する理事の多くは、子供達が乗るヨット

を購入する資金が横浜マリーナには無いとい

うのが理由だった。

ジュニアヨット教室物語・第13話

「だったら、私たちジュニアヨット教室の開

講に前向きな理事たちだけで、有志で集めた

資金がいくらかありますので、それでヨット

を購入させてください」

片桐一郎は、理事長に訴えた。

「そのヨットを置かせていただく艇庫を、マ

リーナ内に用意してもらいたいのと、毎日曜

日に子供達がマリーナの敷地内で活動するこ

とだけお許し願いたい」

片桐一郎は、必死でお願いした。

ジュニアヨット教室物語・第14話

その結果、どうにか片桐一郎の熱意が、理事

たちに伝わり、来春から横浜マリーナでは、

試験的にジュニアヨット教室の開講が決まっ

たのであった。

「ジュニアヨット教室に参加する子供達を集

めないとならないですね」

「そうですね。とりあえず、うちの息子には

ジュニアヨット教室のことを伝えています」

「私も、自分の子供や周りの子供達の両親に

も声をかけてみますよ」

ジュニアヨット教室物語・第15話

来春オープンすることが決まって、片桐一郎

たちは、これから忙しくなりそうだった。

「まずは、子供達の乗るヨットの手配を」

片桐一郎は、数名の理事達とヨットを買うた

めの資金を自腹で負担していた。

「市報にいつも掲載を出している大人のヨッ

ト教室公募の隅にでも、ジュニアヨット教室

の公募も掲載させてもらいましょう」

「そうですね、それが良いです」

片桐達は、打ち合わせをしていた。