「小さいけど、中学生になったんだから自分
でもわかっていなきゃだめだよ」
ジョーは、ゆみに言った。
「俺とゆみちゃんは同級生になるんだろう」
ゆみは、ジョーに言われて慌ててジョーの手
を離すと、1人で先頭を歩き出した。
「え、どっち?」
ゆみは、教室の方向に迷って、ジョーの方を
振り返った。
「今日はいいよ、一緒に行こう」
「ありがとう」
「小さいけど、中学生になったんだから自分
でもわかっていなきゃだめだよ」
ジョーは、ゆみに言った。
「俺とゆみちゃんは同級生になるんだろう」
ゆみは、ジョーに言われて慌ててジョーの手
を離すと、1人で先頭を歩き出した。
「え、どっち?」
ゆみは、教室の方向に迷って、ジョーの方を
振り返った。
「今日はいいよ、一緒に行こう」
「ありがとう」
ジョーに言われて、ゆみは再びジョーのとこ
ろに戻ると、一緒に手を繋いだ。
「今日は、まだ教室の場所わからないんだか
ら、一緒に行こう」
「うん!」
「とりあえず教室に行ってみよう」
ジョーは、ゆみに言った。
「どうして親切にしてくれるの?」
「だって、俺たち同級生の友達だろう」
「うん!」
ゆみは、笑顔でジョーに答えた。
「階段が多いね」
ジョーは、背の低いゆみが小さい足で校舎の
階段を上がっているのを見た。
「1番手前の教室が4組、1番奥が1組」
「そうなんだ、全部で4組までなの」
ゆみは、ジョーの説明を聞いていた。
「4組の誰かに聞いてみようか」
「うん」
ジョーが4組の教室を覗き込んでいると、
「ゆみ!」
ゆみは、廊下の向こうから大声で呼ばれた。
「お姉ちゃん!」
ゆみは、廊下の向こうからやって来る祥恵の
姿に気づいた。
「あんた、一体どこにいたのよ?」
祥恵は、ゆみのことを怒っていた。
「式の間、会場のどこにもいないから心配し
たじゃないの」
「お母さんと一緒にいた」
「お母さんと一緒って、今日から中学生でし
ょうが、全く何をやっているのよ」
祥恵は、ゆみの頭を小突いた。
「ゆみちゃんって祥恵の妹なの?」
「え、ジョーが連れてきてくれたの?」
祥恵は、ジョーにお礼を言った。
「祥恵に妹がいたなんて知らなかったよ」
「そうなの、実は妹がいたのよ」
祥恵は、ジョーに答えた。
「飛び級で妹と同級生になってしまったって
聞いたけど、祥恵の妹だったんだ」
「そうなのよ、お恥ずかしい」
「恥ずかしくないよ、自慢の妹じゃん」
ジョーは、祥恵に言った。
「そう、甘えん坊でぜんぜん自慢の妹じゃな
いけどね」
「そんなことないよ」
ジョーは、祥恵に答えた。
「素直で可愛い妹じゃん」
「そうかな」
「うん、なんか祥恵にぜんぜん似てない、性
格めちゃ逆じゃない」
「そうかな」
妹のことを素直で可愛いと言われて、祥恵は
ちょっと嬉しそうにしていた。
「ちょっと待ってよ。私と逆で素直で可愛い
ってそれ、どういう意味よ」
「あ、そういう意味じゃなくてさ。祥恵の雰
囲気、学校でのリーダーシップ感とぜんぜん
違う感じがする」
「そうね」
祥恵は、ゆみの方を見た。
「ほら、教室に行くよ」
祥恵は、ゆみに言った。
「お母さんにクラス聞き忘れちゃったの」
「あんたは、私と同じ1組よ」
「ゆみちゃんも、俺らと同じ1組なの?」
ジョーが祥恵に聞いた。
「そうなのよ」
祥恵は、ジョーに答えた。
「お兄さんと同じクラスで良かった」
「そうだね、仲良くしような」
ジョーは、ゆみと話していた。
「あんたの席はこっち」
祥恵は1組の教室に入ると、ゆみの手を引っ
張って窓側の1番前の方の席に向かった。
「ここが私の席」
学校の席は大概、あいうえお順なので、今井
のイで1番前の席になることが多かった。
「あんたはこっち」
「お姉ちゃんの後ろ?」
「祥恵のサに、ゆみのユだからでしょう」
「そうか」
ゆみは、祥恵のすぐ後ろの席に腰掛けた。
まだ友達がクラスに誰もいないゆみは、席に
座って周りを見渡していた。祥恵の方は、小
等部から普通に進級しているため、教室後方
の友達のところへ行ってしまった。
「学校で、お姉ちゃんってあんなに大きな声
でお話するんだ」
ゆみは、教室の後方で、姉が友達と大きな声
で話しているのに驚いていた。
「皆、私より大きな子ばかりだな」
クラスの子たちを眺めていた。
教室の前の入り口からジョーよりもチリチリ
の天然パーマでモシャモシャ頭の先生が入っ
てきた。バイクに乗ってきたのだろうか大き
な体格にライダースーツを着ていた。
「それでは授業を始めますよ」
「私は佐伯といいます」
教壇に立った先生は、1組の生徒たちに自己
紹介した。
「私が、君たち1組の担任になります。こち
らが副担任の、英語の塚本先生です」
佐伯先生は、自分の横に立っている女の先生
のことも紹介した。
「今日はここまで。明日からは普通に授業が
始まるからな」
佐伯先生は、生徒たちにそう伝えると、副担
任と教室を後にした。
「ゆみちゃん、お母さんが待っているよ」
ホームルームが終わると、ジョーがゆみの席
にやって来た。
「お母さん?」
祥恵は、ゆみに聞いた。
「お母さんが車でゆみちゃんのこと待ってて
くれてるんだよな」
ジョーが、ゆみに代わって祥恵に説明した。
「あんたね、帰りもお母さんに送ってもらう
つもりなの」
祥恵は、甘えん坊のゆみに呆れていた。
ゆみは、ジョーと一緒に教室を出て駐車場の
お母さんのところに向かった。
「お母さん!」
ゆみは、車にいるお母さんの姿が見えると、
車までいきなり走り出した。
「終わったの?」
「うん!」
ゆみは、お母さんに頷いた。
「ジョー君、ゆみのことをありがとうね」
「いえいえ」
車の助手席には、ジョーのお母さんもいた。
「ゆみ、後ろに乗りなさい」
お母さんに言われて、ゆみは後ろの扉を開く
と、後ろの席に座った。
「お母さんは、ゆみちゃんのお母さんと一緒
に帰って、途中でお昼ごはんするけど」
ジョーのお母さんは、ジョーに伝えた。
「そうなんだ」
「あんたも一緒に乗って、ゆみちゃんとお昼
にしたら?」
「それも良いんだけどさ、先に小汀たちと吉
祥寺でお昼する約束しているんだけど」
「あら、そうなの」
「なので、軍資金を」
ジョーのお母さんは苦笑しつつ、ジョーにお
金を渡していた。
「祥恵ー!」
お母さんは、こっちにやって来る祥恵の姿を
見つけて、大声で叫んだ。
「どうしたの?」
祥恵は、初めは無視しようと思ったが、あま
りに大声なので渋々、母親の側に来た。
「これから帰るの?」
「あなたも、これから帰るの?」
「まあ、そうだけど」
「じゃ、乗りなさいよ」
「なんでよ、百合子たちと帰って、途中でお
昼して行く予定なんだけど」
祥恵は、お母さんに文句を言った。
「祥恵、お母さんと帰りなよ」
祥恵と一緒にいた背の高い女の子2人が、祥
恵に言った。
「うちらとのお昼は、またいつでも食べられ
るじゃないの」
「はい、どうされましたか?」
「この前、質問した警察がうちに見に来た件
なのですが、無事取得できました」
「そうなんですか、それは良かったです」
受講者は、古物商が取れて嬉しそうだ。
「最初、警察がうちに来るって聞いて、なん
かドキドキしたのですが」
その時の模様を話す受講者。
「こちらに、順番に車を停めて、船に載せて
海外へ輸出されるご予定なんですねと聞かれ
後はそのまま帰って行かれました」
「それでは、後はホームページですね」
育成部門担当者は、受講者と話している。
「ああ、そうですね。最初に申し込んだイン
ターネット中古車オークション会場も正式な
会員証が届きましたし」
受講者は、育成担当者に答えた。
「古物商許可証も手に入りましたし」
「後は海外バイヤー向けホームページ」
「そうなんです。そのことなのですが、やは
り自分で作れそうもないので、そちらにご依
頼したいと思うのですが」
ゆみの勤めている横浜の貿易会社では、育成
部門のオンライン通信教育講座とホームペー
ジ制作プランは別々になっている。
「私、ホームページは自分で作れます」
そういった受講者のために、実際の中古車輸
出実務を教えるオンライン通信教育講座とは
離して、ホームページ制作プランは別オプシ
ョンにしてあるのだった。
「では、ホームページ制作もお申込みで」
そして、申込みがあると、育成担当者からゆ
みのところに制作の依頼が入るのだった。
「百合子ちゃんとは、明日も会えるでしょう
お母さんは、祥恵も一緒に車で帰って欲しそ
うだった。
「わかったよ」
祥恵は、後ろのドアを開けると、ゆみにもっ
と奥へ移動しろと命令してから乗り込んだ。
「ジョー君のお母さん」
お母さんは、助手席のおばさんを祥恵に紹介
した。
「知ってるよ。おばさん、こんにちは」
「こんにちは」
祥恵は、ジョーとも同じ小等部の同級生だか
ら、ジョーのお母さんとも顔見知りだった。
「もしかして、ゆみちゃんって祥ちゃんの妹
さんだったのね」
「はい、そうです」
祥恵は、ジョーのお母さんに答えた。
「あら、そうなの。祥ちゃんってこんな可愛
妹さんがいたのね」
「可愛いかな?まあ、ゆみは可愛いだけは、
可愛いかもしれないな」
祥恵は、ゆみの方をチラ見した。
「1組の学級委員だった祥ちゃんに、飛び級
で進級してしまう勉強できる妹さんって、姉
妹お2人ともすごいわね」
「私、学級委員はしたことないんだけど」
祥恵は、ジョーのお母さんに苦笑していた。
「あなたって、クラスのリーダーなの?」
お母さんは、祥恵に聞いた。
「リーダーではないけど」
「1組のクラス中の皆から、かなり頼りにさ
れてるものね」
ジョーのお母さんは、祥恵に言った。
「そうかな」
「1組の皆や後輩からも慕われているお姉さ
んですものね」
「へえ、祥恵がね」
お母さんは、ジョーのお母さんから話を聞い
て驚いていた。祥恵は、ゆみと違って、学校
であった事を全然話さないから全く知らなか
ったのだった。
「あなたも、ゆみのように今度から学校であ
った事をいろいろ話してよね」
「嫌よ、面倒くさい」
祥恵は、普段からお母さんに家ではあまり学
校であったことを話さないので、ファミレス
でお昼ごはんしながら、ジョーのお母さんか
ら聞いて驚いていたのだった。
「小等部では祥恵さんは有名人、ヒーローだ
ったわよね」
「それほどでも」
祥恵は、ジョーのお母さんに言われて、少し
照れていた。
「まあ、ゆみの方が明日からでもすぐ有名人
になるだろうけどね」
祥恵は、目の前で中学生になってもお母さん
に未だに食べさせてもらってるゆみの姿をみ
て言った。
「ゆみちゃんも、お姉さんの遺伝子持ってそ
うだものね」
ジョーのお母さんが笑顔で答えた。
「そういう意味じゃなくて、中学生になって
も、お母さんにごはん食べさせてもらってる
なんて、甘えん坊としてすぐに中等部中の有
名人よ」
祥恵は、目の前のゆみの姿に呆れていた。
「学校ではお母さん一緒でないから1人でも
食べられるわよね」
お母さんは、優しくゆみの頭を撫でた。
夕食後
「あーあ、いい湯だった。ゆみは?」
祥恵は、お風呂から上がって、自分の短い髪
をタオルドライしながらお母さんに聞いた。
「もう9時過ぎてるわよ」
「そうか、もう寝たのか」
祥恵は、時計を確認した。
「ゆみは、9時が就寝だものね」
ゆみは、ニューヨークで未熟児で生まれ、帰
国の飛行機に乗れず、7歳までニューヨーク
で過ごしたのだった。
7歳で飛行機に乗れるまでに体力が回復し日
本へ帰国したのだったが、それでもまだ身体
がそんなに強くないので、夜は9時には寝て
朝は7時過ぎに起きる仕事をしていた。
「あなた、ゆみと同じクラスになったの」
お母さんは、祥恵に聞いた。
「そうよ、おかげで学校でも、これからずっ
とゆみと一緒だよ」
「もしゃもしゃ頭の佐伯先生、副担任で英語
の塚本先生」
お母さんは、祥恵に言った。
「何それって、ゆみから聞いたの?」
祥恵は、お母さんへ逆に質問した。
「ゆみちゃんは、あなたと違って学校であっ
たことを全部ちゃんと報告してくれますから
ね」
「そうか、これからは、ゆみを通して全部お
母さんにバレるのか」
祥恵は、お母さんに答えた。
「あなたが、そんなクラスのリーダー格だっ
たなんて知らなかったわ」
お母さんは祥恵を誇らしそうに抱きしめた。
「明日は、お母さんは学校行かないから、あ
んたがゆみちゃんを連れて行ってあげてね」
お母さんは、祥恵に伝えた。
「わかっているって」
祥恵は、お母さんに答えた。
「ゆみ、学校行くよ!」
祥恵は、玄関先から部屋の中のゆみに声をか
けると、学校へ出かけた。
「お姉ちゃん、待ってー」
ゆみは、階段を降りて来ると、玄関で靴を履
いていた。
「はい、行くよ」
祥恵が差し出した手を握ると、一緒に学校へ
出かけた。学校に着くと、ゆみは1組の自分
の席に1人腰掛けていた。
「正英、シャツが出ているよ」
「え、どこどこ?」
祥恵は、教室の後ろの方で、たくさんの友達
たちとお喋りをしていた。